株式を所有する人の中には、企業の株主優待を目的にしている人が少なくありません。
この株主優待というのは日本独自の制度であり、他の国で見ることはできません。
株主優待は株主としての特典になっていますが、実は企業側にもメリットがあります。そのため、「長期株主優待制度」を設けている企業が少なくありません。
長期株主優待制度の意味
日本の企業には、一定年数以上株式を保有している株主に対して、より多くの商品券や優待券を配付する企業が少なくありません。
また、自社製品を無料で提供することもあります。それは、以下のようなメリットがあるからです。
1.企業への愛着心の構築
企業にとっては「自社のファン」が多くなれば、それだけ安定した事業運営が可能になります。個人投資家が株主優待を得られることで株式の保有期間が長くなると、自然に「自分の会社」という愛着心を持つようになります。
株式の売買によって株価の値動きが激しくなるとマネーゲームの対象とされ、安定株主を獲得するのが難しくなります。そこで、長期株主優待制度を設けて長期株主を増やし、株価を安定させることが企業の安定経営にも繋がります。
株式の売買が増えることは、株式の流動性を高めるというメリットがありますが、単に株価の変動による利益を狙う「投機家」が増えるだけで、会社の事業発展に結びつかないのが実態です。
2.法人税の節税
長期株主優待制度は法人税を節税できるというメリットもあります。企業は事業によって利益が出ると、株主に「配当」を付与しますが、配当を増やすには利益を上げていく必要があり、必然的に法人税も多く課されます。
一方、株主優待は通常、売上の割引または費用として処理できます。その分の経費が利益から削減されるため、法人税も少なくなります。同じように株主へ特典を与えるなら、配当よりも株主優待の方が税金を節約できます。
3.株価の低下の防止
長期ではなく短期的な株主優待だと、株主の権利確定日が過ぎると、株価が大きく値下がりする傾向があります。それは、株主優待を目的として権利確定日の直前に株式を購入する投資家の多いことが原因になっています。そういう投資家は権利が確定すると、すぐに株式を売却するため、権利確定日が過ぎると株価が値下がりすることになります。しかし、長期優待制度を構築し、株主が長期に株式を保有するようになれば、株価の大きな値下りリスクを防ぐことが可能になります。
確定申告が必要
一方、株主にとって、株主優待は雑所得となり、所得税の対象になります。
サラリーマンの場合は、給与以外の所得が20万円を超えなければ確定申告の必要はありません。
ただ、確定申告の必要な人は、株主優待による「経済的な利益」についても申告する必要があります。しかしながら、株主優待がどれくらいの利益になるのかを判断するのは難しいため、税務署でも黙認しているのが実態です。